
コミュニケーションは、
デザインできます。
対話的コミュニケーション
カフェでデートをしているようなコミュニケーションを想像してください。
ここに二人のおしゃべりを邪魔する者はいません。「1対1」の対話が成立しています。
私はね、あんみつが好きなの…
そうか、オレは、太鼓まんじゅうがすきだ。
一見ちぐはぐな掛け合いになっていようがお構いなしです。大丈夫、ふたりの眼差しの先には、お互いが映っています。片方が投げかけた言葉に、相手がきちんと反応しています。
ピンポンやキャッチボールのような関係です。
対話的コミュニケーションの有利な面として、まずお互いが対面、つまりもう既に「向き合っている」ことを前提にしているということです。
この状態は、なかなか他のコミュニケーションでは形成しがたい状態なのです。
恋の片道切符
こんどは、企業がお客様に対して同じことをやってみます。
企業は新しい商品やサービスをお知らせします。ここではこの企業を【老舗和菓子店】としてみましょう。
○○屋の「あんみつ」五十年ぶりのリニューアル!風味絶佳
お客様の反応は概ねこんなカンジです。
ふーん…。
この違いはなんでしょう。
上のデートをしているカップルは、お互い相手に対し興味を持っています。
「彼は見た目はハンサムだけど、私のボーイフレンドとして相応しいかしら…」【♀】
「彼女といつ手を繋げるかなぁ…」【♂】
お互いに相手を値踏みをしたり詮索しながら、いろんな意味で二人の間の距離を縮めようとしています。
一方、企業からの「新商品のお知らせ」は、彼にとっては所詮あってもなくても構わないものです。
どちらかというと「興味ない」類の商品だったのかもしれません。
ここでの関係は、片道通行の〈情報伝達〉に過ぎません。投げたボールを受け取ってもらえなかったら残念ですが、相手はグローブで一度受け取ったのに、そのままポイとボールをグラウンドに落としてベンチに帰っちゃった…なんてのはもっと悲しいですよ…その晩には夢に出てきそうな体験です。
ご縁がなかったのでしょうか
「ご縁がなかった」は、不採用通知の決まり文句ですが、結果として、そういう関係しか築けなかったというのは事実です。
企業の新商品は、彼にとって価値のない情報だったわけです。
もしも企業が彼の嗜好を知っていたら、もうちょっとアプローチを工夫できたかもしれません。
相手を知る
《相手を知る》という態度は、歴史的に日本人には苦手なことです。日本人には「暗黙の了解」「以心伝心」が美しいとされる文化です。相手のことを根掘り葉掘り詮索することは〈野暮で下品〉なことと侮蔑されます。
また日本が太平洋戦争に敗戦した理由のひとつとして、敵の事情を正確に調べることもせず「我々は強い」と意地と精神論だけでなんとかしようとした軍部の傲慢が挙げられています。
「戦法・戦術・戦略」の元となるリソースは「情報」に他なりません。

先の【老舗和菓子屋】さんを例に取ってみても
- 今はどんな人が、どんなものを探しているのか。
- 世間でどんなものが話題になっているのか。
- もっと具体的に、女子高生の間ではどうか。
- ミセスには何が好まれているのか。
- おじさんたちにも、甘いものを好む層が少なからずいて、何を求めているのか。
いろいろと考える手がかりは見つかります。大切なことは「相手に興味を持つ」こと。
ストーキングはダメですが、観察はチカラなりです。
先祖代々引き継がれてきた味や手法は、大切に継承していかなければなりません。
新興のメーカーには真似が出来ない「秘伝の○○」なんていう武器もあるかもしれません。
そんな資産といえる〈老舗ならではの強み〉をきちんと伝えることも《宣伝の戦法》です。
また「秘伝の○○」を現代のスイーツづくりに活かすことも《商品開発の戦法》です。
周りを知る
【老舗和菓子屋】さんが、もしお客様を知る方法を持っていれば、発したメッセージはもっと違うものになっていたでしょう。50年続いた「あんみつ」だから美味いのは当然だから『「リニューアル!」と宣伝すれば、みんな買いに来るはず』と高をくくっていたはず。
でも時代はもう50年前とすっかり変わっています。
南蛮から渡来したカステラだけが競合だった時代ではなく、洋菓子スイーツの種類も販売店も群雄割拠の時代です。しかもインターネットで全国のおいしいスイーツがすぐに取り寄せできる時代です。
さらに悪いことに、来月近所に大型ショッピングモールができて、有名な全国ブランドのスイーツ店がいくつか出店すると、風の噂で聞きつけました。
「うっ、絶体絶命のピンチ!」なんてことがリアルにありそうです。
「隣は何をする人ぞ」という無関心な態度は、気がつけば自分だけ時代から取り残されている状態を自ら招いていることになり兼ねません。
どんなに老舗の企業でも世の中の一員です。世の中の動向というものは絶えず気にしていなければ成りません。
自分たちを取り囲む環境は、ダイナミックに日々変化しています。
50年続いた「あんみつ」には、時代が変わっても売れてきただけの「おいしさ=価値」があったのでしょう。
ただその〈価値〉は、これからも〈永遠に続く価値ではなくなる〉時が来るかもしれないのです。
価値を共有する
相手を知ると、わかりあえる部分が増えます。企業が提供する製品やサービスの〈価値〉が、お客様の求める価値と一致、つまり《価値を共有》できた時には、お客様はとても関心を寄せてくれるでしょう。
その「価値」を、もっと今の人に伝える表現や、潜在顧客の掘り起こしは可能です。
目が飛び出る高額なテレビコマーシャルでなくても《価値》を伝える方法があります。
早速「お買い物リスト」のひとつに入れてくれる人もあれば、「もっとくわしく知りたい」とインターネットで情報を探し始めるかもしれません。比較サイトで価格の最下値を知ろうとするかもしれません。
こうなれば、無反応だった人が〈活性〉したことになります。
購入するしかけを用意する
売りたい商品の価値を理解してくれる人はどんな人か、ターゲットの観察と分析、市場の動向を理解できたら、ようやく買ってくれる予備軍に対して、欲しいと思わせるメッセージを伝えていきます。
さて、漁場にエサを撒くプロセスです。とびきり好物のエサを撒きましょう。
そんじゅそこらの「あんみつ」と違う、自分たちが丹誠込めて作っているその「自慢」の部分を、丁寧に伝えましょう。
だらだら説明しそうになったら、3秒で伝わるようなキャッチフレーズを考案すべきかもしれません。
女子高生には女子高生向けのコミュニケーションを考えることもできます。「高等女学校の生徒から愛されて50年」なんていうメッセージが、トライアル購買のきっかけになるかもしれません。
本物を知っている年配の方には、50年前から仕入れている餡の原料「金時豆」の蘊蓄を、誠意を込めてご説明することで、安心と信頼感をもって好意的に受け入れてもらえるかもしれません。
でも「その漁場ってどこにあるのさ?」ということも、よく検討しなければいけません。
イワシの大好物を撒いても、そこにイワシがたくさんいなければ元の木阿弥です。
必ずしも漁場はひとつではないことも重要なポイントです。


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